しょーもない疑問から始める、Question Driven Learningを始めよう ~ 例題: 葉っぱのギザギザはなんであるの?

問題意識

弊社のグループやチームで、新しい技術を学ぶスピード、仕事に使えるだけの英語を学ぶスピードが遅い人が多い気がする。(自分のことは棚に上げつつ)

個人の能力の問題ではなく、学習方法や効率に問題があるのではないか?

楽しんで学ぶ、サステナブルな学習文化が身についていないんじゃないか?

という意識が常日頃からある。

 

何でそう思ったのかっつーと (前書き)

例えば英語を身につけたい人がいるとする。

参考書とか単語帳とかを買って、1日10とか100とかの単語をがんばって覚えようとする。なんちゃら英会話、を予約して1日30分しゃべってますとかしたりする。

 

ストイックな人ならそれを1年も続ければそこそこ語彙が広まると思うが、自分のように飽きっぽい人は3日も続けば良い方だと思う。途中で疲れたりつまんなくなったりしてさぼっちゃって続かないだろう。

 

一方で、友達の子供とかと話してるといつも圧倒される。

  • 道にある見慣れないものを指差してはWhat's that ?  Why ?
  • なんで?どうして?
  • これ作って!
  • 遊んで!
  • 遊んで!
  • もっと!

の嵐。

でだいたいお母さんとかにいい加減にしなさい!って怒られるパターン。

 

相手をしていていつも思うのは、自分ではわかってると思っていたことでも半分も説明できない。説明したところで理解してもらえてるのかのFBも薄い。説明用語も限られるし、実は大人でもそもそもわかってないことたくさんあるなと痛感する。

でも一方で、本来の学習ってこういうことだよな、といつも思う。

 

結局何が言いたいかっつーと (序論)

  • 疑問を大事にしよう
  • 疑問を深掘りする技術を身につけよう!

 

そもそも知識を身につける順序として、

「欲求(英語を身につけたい)」-> 「学習(本を買う、読み書きする)」

という流れは、よほど強い欲求でない限りはあんまり意味ない、というか長続きしないんじゃないだろうか?継続する仕組みができてないんじゃないか?と常日頃から考えていた。

  

じゃあどういう学習だと長続きするの?

結論から言うと、疑問持ってそれを深掘りしてけば、知識は勝手に身につくはず。

 

例えば?(TL; DR )

葉っぱがなんでギザギザなのか?という疑問に興味ない人はここ読まなくてもokです

結論までスキップしてください

 

外でタバコ吸ってたら、いつもは気にならない葉っぱがなんか気になった。

どこにでもある普通の葉っぱで、小学校の裏門に植えられている。

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葉っぱのギザギザ

よく見るとちょっとギザギザしてる。

* 以下青字は疑問

たいして珍しくもないが、なんでギザギザしてるのか気になったのでググって見た。

 

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ググった結果

academist-cf.com

 

この記事を見て見ると、こんな感じ

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知らなかった単語

* 以下赤字は知らなかった知識

「ペプチドEPFL」って何なのかそもそも知らないが、ギザギザと関係あるならちょっと気になる。

「鋸歯」、のこぎりみたいな形の歯。「きょし」って読むのも今知った。

 

EPFLとは、植物が持つペプチドの一グループで、最近見つかった物質

 

 

ペプチドって何?例のごとくググる

ペプチド - Wikipedia

2000年頃の高校の化学ⅠBの知識をちょっと思い出しつつ

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ペプチド結合

全然ぴんと来てないが、要はアミノ酸と呼ばれる形の有機物が繋がる際の形の名前?らしい。上の図の左のOHと右のHでH2Oになって、そこがなくなると同時にCとNが直接繋がり(脱水縮合?)くっつくシステムのようだ。

 

葉っぱがギザギザなのなんでなん?を知りたいだけなのにどんどん脱線して関係ない知識が身について行く。。。

 

wikiから最初のブログの記事に戻るとこう書かれている

今回、シロイヌナズナのEPFLのうちのひとつであるEPFL2という物質の機能を知るため、EPFL2を作れない株(変異株)を作製して、普通の株(野生株)との違いが何か見られないか、詳しく観察しました。その結果、野生株の葉には鋸歯があるのに、変異株の葉は鋸歯の無い滑らかな形をしていることに気づきました。つまり、EPFL2はギザギザした形を生み出す働きがあるとわかりました。 

やっと繋がった!EPFL2というペプチドの機能の一つとして、葉っぱをギザギザにする機能があるんじゃねーのかという説だった模様。

ここで納得して終われる人は終わってokだが、正直自分はまだぜんぜん納得してない。つまりどういうこと?

もうちょい読んでみる。

 

生まれたばかりの1ミリメートルに満たない小さな葉は、楕円形に近い単純な形をしているので、縁の一部が大きく出っ張るように成長しなければ、縁のギザギザは作られません。このとき、出っ張りの先端にだけオーキシンという植物ホルモンが蓄積して、先端部以外(裾野部分)ではオーキシンが蓄積しないという濃淡が生じます。

 

オーキシンて何よ

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オーキシンてなんなの

植物の成長を促す植物ホルモンで、ギザギザの先っちょにあるらしい。

 

どうやらこの記事は、ギザギザはどのようにつくられるのかという " How ?" には答えてくれたが、"Why?"には答えてくれなさそうだということにそろそろ気づく。

どうやら疑問のたて方にも問題があったようだ。

自分はWhyを知りたかったが、見つけた記事は

EPFL2のさらに興味深い点は、ほかの植物ホルモンのように、人工的に合成して投与できると期待される点です。たとえば、盆栽や他の観葉植物など、見て楽しむ植物や、レタスや水菜などの葉野菜にEPFL2を投与して形を変えることができるかもしれないと思うと、夢が膨らみます。

 と言う感じで、工学的な観点でギザギザを産業利用することに関心があったようだが、自分はそもそもなんでギザギザなん?植物側からギザギザになりたがる理由あんのか?というWhyに近い疑問だった。調べ方がよろしくなかった模様。

 

新たに身に付けたワード、「鋸歯」の役割でググってみた。

jspp.org

 

木の葉には鋸歯があるものがありますが、鋸歯の役割はなんでしょうか。光合成の効率をあげるためであるという解答を良く見かけますが、それ以外にも役割はありますか。
... 中略

【塚谷先生からの回答】
ご質問ありがとうございます。
一言でいうと、これは難問で誰も答を知りません。

まじかw

そんな難問だったんか

ごく近縁種の間でも鋸歯の形が異なっていることがあります。たとえば片方の種類は単純なギザギザの鋸歯、その近縁種は二重の鋸歯(重鋸歯という)を持っている、ということから見分けることがでできたりします。それでいて、両種の間で生えている場所がほとんど変わらない、混生しているというようなことも、よくあります。そういう例をいろいろ見ていると、鋸歯の形を種ごとにかたくなに守っている理由は、環境適応のせいとは思えません。不思議です。
ところが巨視的には鋸歯の有無と年平均気温と葉関係があることが知られています。化石の研究者の間では古くから知られている法則で、年平均気温が高いほどその地域に生える植物の中で、鋸歯が目立つものの比率が低くなるというものがあります。実際に現生の生態系でも、この法則が良く当てはまることが確認されており、化石の生まれた頃の年平均気温を推定するデータの1つとして使われるほどです。この理由は不明ですが、良い指標であることは確かです。
そこで古くから、葉の表面の温度を保つのに(冷えすぎないように、あるいは熱しすぎないように)するのに、鋸歯が何らかの形で関わっているという解釈が成されてきました。しかしそれにしては鋸歯の効果は微弱です。また上記のように同じ土地に生えていながら、鋸歯の有無に共通性の無いケースも見られます。
また鋸歯の先端にはしばしば、水孔というものが生じて、植物体内の維管束を通る余剰な水分を放出するのに使われます。この水孔がどれだけ必要であるかも、大事な要素という解釈もあります。これも関係はするでしょうが、それだけとは思いがたい面があります。

 温度が関係しているかも?説。ギザギザで表面積大きい方が涼しそうな感じ?確かに南国の葉っぱとかギザギザしてそうではある。

さらに私たちのシロイヌナズナを使った研究から、鋸歯は植物ホルモンのオーキシンのはたらきで作られること、最初のうちはギザギザがはっきりしているものの、後の成長で次第に滑らかになったりさらに目立つようになったりすることが分かっています。

 

また出たシロイヌナズナオーキシン

 

そんなことから、私たちは、鋸歯の形の多様性というものは、それ自身の形の多様性が大事なのではないのかもしれない、と思っています。むしろ、鋸歯形成に関わるオーキシンなどのさまざまな因子が、植物の体の他の部分でどれだけ必要かに応じて、それに引きずられてついでに形が変わっているという面もあるのではないか、と感じています。
一般論として、生き物の体の形は、必ずしも必然性からそうなっているとは限らず、特に良くも悪くもないので取りあえずそういう形を取っている、という事例が多々あると考えられています。
鋸歯も、ある程度は環境に対する適応や役目をもっているとは思いますが、細かな種間の差異に関しては、あるいはあまり特別な理由がないのかもしれません。
今後、若い世代の方々がこの謎にチャレンジしてくれることを期待しています。

 塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科)

一般論として大した理由なくてもまあそんな困らんからそういう形になっておるんじゃないかと。

最後は若い世代にチャレンジを期待すると。

若干モヤモヤは残るが、温度やどうやら東大の先生でもよくわからない難問だったということがわかった。

塚谷裕一 - Wikipedia 先生、ありがとうございました!

 

小まとめ

葉っぱは何でギザギザなの?という疑問から得られた知識

  1. ペプチド ( アミノ酸, 脱水結合 )
  2. EPFL
  3. 鋸歯
  4. オーキシン
  5. 鋸歯は周りの温度と関係あるんじゃないか説
  6. 鋸歯でもなんでも一般論として、大した理由なくてもまあそんな困らんからそういう形になっておるんじゃないかと。
  7. 塚谷裕一先生

 

まとめ

学習はこんな感じのステップを踏むと効率的なのではないか説

  1. 疑問を持つ ( 気になってモヤモヤする )
  2. 調べる ( 集中力と時間が必要 )
  3. 知識が身につきつつ ( 学習 )
  4. 疑問がスッキリする ( モヤモヤ解決して満足! )

所感

ギザギザの疑問持って写真撮ってこのブログ記事作るまでに、だいたい2時間くらいかかりました。

このステップのpros/consとしては

  • pros 
    • モヤモヤスッキリ、知識たくさん身につく!
  • cons 
    • 自分の中の疑問を見つけないといけない。
    • 「調べる」ステップがハードル高いのかも?グーグル力とか化学ⅠBとか前提となるスキルが実はそこそこありそう。
    • 時間と集中力が必要。
    • 一つの疑問がスッキリすると、また新たな疑問が生まれがち(なぜなぜ無限ループ) 

今後に向けて 

最初この方法をCuriosity Driven Learningとか名付けようかとかぼんやり思いつつも、どうせなんとかラーニングとかData Analytics/AI方面ですでにあるんだろうなと思ってググったら案の定あった。

robotのラーニング方式の名前として既にCuriosity Driven Learningというのがある模様。

https://cmpe.boun.edu.tr/~emre/papers/ICDL2007.pdf

 

自分が言いたかったのは組織の学習効率をあげたいということなので、ちょっと日本語英語っぽくてダサいがQuestion Driven Learning(仮)という名前にとりあえずしとく。

 

個人ではなく組織でこのQDL ( Question Driven Learning ) を広めるためには

  • 疑問を大事にしようぜカルチャーを作る。その疑問、大事だよ的な。
  • グーグル力とか、辞書の引き方レベルの基礎スキルを伝える
  • 学習するための時間と集中できる環境を確保する
  • 学習した結果を発表させる(疑問 -> スッキリ!の満足感を個人から組織に伝搬させる)

みたいなのを、いかに「楽しく」できるかが大事なのではなかろうか。